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左・双江の中心地

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を持たないラフ族では、伝承があるにすぎないのだ。
清が中国を統一していく過程で明の永明王は雲南に逃れ、やがて呉三桂に攻め滅ぼされる。呉三桂は雲南に割拠するが、そのうちに滅ぼされていく。
こうした中央レベルでの争いが終わった後、雲南の地生えの勢力と清が対時するのは千八百年代である。
そして、黒江、瀾池江の川沿いを中心としてラフ族の清の支配に対する抵抗の戦いがあちこちで続けられている。(『拉祐族簡史』雲南人民出版会社発行 一九八六)おそらくこれらの戦いの過程で生み出された伝説(事実ももちろん含めて)であったろう。
「ムメミメというのはね」とダイエー君が説明を始める。ムはクニという意味で、メはラフの人々という意味だ。つまりラフのクニだ。ミは手の平のように地平線まで平らな土地という意味で、ミメは平野に住んでいるラフの人々ということになる。つまり「地平線まで続く平野にあるラフの人々のクニ」というのが「ムメミメ」なのだ。
膨さんが木によりかかりながら話してくれる。
「ムメミメはものすごい豊かなクニでした。太い木の森が沢山あって、森では果物でも獣でもなんでも豊富に手に入れることができた。大きな木には蜂の巣が十も二十もあった。そして木のウロにはリスがいっぱいいた。人間も森の獣も何不自由なく暮していたんです。稲田は大きく田に水を入れる水口がひとつの田んぼには十個もあった。しかも苗はひとひろずつ植えれば充分に育ち、稲穂は馬のしっぽのように大きか

 

 

 

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